美人はツラいよ

松田朋紀(まつだ ともき)。
この春から社長肝入りで新設された経営戦略室の若きホープだ。

年齢は確か24、5歳。
入社してすぐに営業部で目覚ましい営業成績を上げ、幹部からの注目を集めた彼は、入社三年目にして経営戦略室のメンバーに抜擢された逸材だ。

いつだったか、由紀恵が彼のことをこう評したことがある。

『あれは、雰囲気イケメンね。』

一重の瞳に、薄い唇。どこか冷たい印象を与えてしまいかねない、あっさりとした顔立ちながら、いつも不思議と話しかけやすいオーラと、爽やかさを身にまとっている。

『要するに、自分をちゃんと理解して、最大限自分を良く見せる方法を知ってるタイプ。アンタと、真逆ね。』

由紀恵にそんな風に指摘されて、むすっと膨れたのはごく最近のことだ。
(ちなみに、私は自分の顔面偏差値をまるで理解していない残念女らしい。)
しかし、なるほど、間近で拝むと、彼女の言っていたことにも頷ける。
よく見れば、顔は格別整っている訳ではない。
それでも、清潔感溢れるスーツを、嫌みな感じもなく着こなし、控え目に微笑みながら佇んでいる姿は、文句の付けようもなく格好良かった。
これで、仕事も出来るとなれば、社内の女の子が騒ぐのも納得だ。

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