美人はツラいよ

「ありがとうございました!たすかりました。」

きっかり、二時間後。
経営戦略室まで私が持ってきた資料に目を通して、顔を上げた彼は、私に丁寧に頭を下げた。

「やめてやめて。仕事だし、残業もちゃんと付けるし。」

あまりに深く頭を下げられて、私は慌てて彼に頭を上げさせる。
社内きっての若手成長株をひれ伏させている姿を誰かに見られれば、さらに私のお局度が上がってしまう!
この時間、経理課はもぬけの殻だが、戦略室にはまだ数名の社員が残っていた。

「データは共有のサーバにパス付きで入れて置いたから。パスワードはこれね。じゃあ、お疲れ様。」

そう言い残して、そそくさと戦略室を後にする。


う~ん、疲れたな。

さすがに二時間座りっぱなしで資料を作っていたため、背中の筋肉が凝り固まっていた。
廊下を歩きながら背伸びをして、その筋肉をほぐしていく。

お腹もぺこぺこだ。
とはいえ、明日も仕事だから、早く家に帰って今日は簡単にレトルトカレーで済まそうと思ったところで、エレベーター前のスペースにあるコーヒーの自販機が目に入った。

家に帰るまでの一時しのぎに、甘いカフェオレでも買っていこう。
そう思って、足を止める。
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