美人はツラいよ

再び頼まれたデータ作成は、昨日のデータをさらに詳細にすることと、戦略室でピックアップした顧客について、個別にデータを纏めることだった。

しばらくは、この作業を繰り返していくことになるらしい。
私には、これが何の為になるのかさっぱり分からないが、彼曰く今後の会社の方向性を決めるために重要なデータらしい。

今日は昨日とは違い、データを一つずつ仕上げるごとに彼のチェックを受けて、次の作業の指示をもらうというスタイルで進めている。
必要データをリストにまとめてもらえれば十分な気もしたが、どうやら彼はデータを見ながら、さらにどんなデータが必要か考えながら指示を出しているようだ。
彼が資料を作成するのと同時に、必要なデータを私が纏めていく。
あまり余裕のある仕事の進め方ではないが、無駄が無く合理的とも言えなくもない。

私は、また一つ出来上がったデータをサーバ上で上書き保存してから、背後を振り返った。
打ち合わせ用のテーブルでノートパソコンを開いている彼は、雰囲気イケメンの爽やかさも、色気も全くちらつかせることはなく、ただ黙々と考えごとをしながらキーをタッチしている。
無造作に軽く組まれた足は足の長さを際立たせているし、ピンと伸びた背筋からは育ちの良さが伝わってくる。
何より、ディスプレイを見つめる瞳が真剣で印象的だ。


「そんなに見つめられると、照れます。」

思わず見惚れていると、視線はそのままなのに、彼の口が突然動いた。
真面目な表情から出たのは、意外にもからかうような口調だ。
私は見つめていたのがバレた気まずさを取り払うように、素早く報告する。

「えーっと、さっきのデータ出来ました。確認して貰ってもいいかな?」
「ふっ、分かりました。少し待ってくださいね。」

彼が可笑しそうに笑ったのは一瞬で、すぐに真剣な顔つきに戻った。
社内LANを使って彼がデータを確認する間、私は先ほどの照れ臭さを払拭するために席を立つ。

「コーヒー買ってくるね。松田君は、何がいい?」
「あ、ブラックで。待ってください、今お金…」
「いいよいいよ。昼間、カフェモカご馳走になったし。一応、こんなでも私先輩だしね。今度は私がご馳走しますよ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
「はいはい、ちょっと行ってくるね。」

私は財布を手に、廊下にある自販機を目指した。
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