美人はツラいよ
こう言えば私が断ると思っているのか、彼はこちらを挑発するように見つめながらも、その声はほんの少し戸惑っているようだった。
確かに、襲われる可能性無きにしも有らず。しかし、私はどうしても彼の話を聞きたかった。もやもやしたまま一日を終えるのは性に合わないのだ。
私は、そんな風に考えを巡らせてから、口を開いた。

「まあ、今更勿体付けるような年齢でもないし。」
「また、そんな。ガード堅いのか緩いのか、どっちですか…」

私の答えが全くの期待はずれだったのか、彼が大きく動揺したのが分かった。
私は、それに気が付かない振りをして、アパートの外階段を上る。
彼も、私の後に続いて仕方なく階段を上がる。

「それに、」

部屋の前で、鍵を取り出してドアを開けた。

「ちゃんと目を見て、話がしたいから。暗いところでは、話したくないの。」

ドアを大きめに開いて、彼の目を見てしっかりと告げた。
玄関の明かりに照らされた彼の瞳は、何とか冷静さを保とうと必死だった。

「散らかってるけど、どうぞ。」

瞬きを繰り返して、すっかり動揺しているらしい彼を、私は部屋の中へと招き入れた。

「…まいったな。」

玄関で靴を脱ぎながら、彼がぽつりと呟いた。
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