美人はツラいよ
「あの、そんなに見つめられると、妙に照れるんですけど…」
二人分のコーヒーを出してからソファーに掛ける彼の隣に腰を下ろして、「さあ、話したまえ」と言わんばかりに、 上半身を彼の方へと向けた。
完全にペースを私に握られた松田君は小さなため息を落としてから天を仰いだ。
「ホントに話すんですか?」
「松田君が話すって言ったのよ。」
「いや、まさかこんな明るいところで。ガン見されて話すことになるとは思ってなくて。」
「暗いところで、ちゃっちゃと終わらせようだなんて、ズルいわね。私もちゃんと答えるから、ちゃんと話して。」
私の真剣な訴えに観念したのか、彼はぽつりぽつりと話し始めた。
「まだ会社に入りたての頃、営業部に居たんですけど…」
話の始まりは想像していたより遙かに昔らしい。
思い出しながらなのか、話をする松田君の瞳が時折宙をさまよう。
「その頃、初めて萱島さんを見かけて、最初は、キレイな人だなーってただけで、特に何とも思ってませんでした。」
きれい、というのは未だに自分の中ではピンとこない褒め言葉だ。