美人はツラいよ
松田君は、ひとこと言い終える度に小さく呼吸を整えていた。
どうやら、緊張しているみたいだった。普段の、落ち着いた彼とは違う。

「萱島さん、その頃、俺の向かいに座ってた木村さんのところに、仕事のこと、色々聞きに来てませんでしたか?」
「ああ、確かにたまに行ってた。木村さんが前年度まで経理にいたから、分かんないこと色々教えてもらいに。」
「たまにじゃないですよ、ほぼ毎日でした。」
「そ、そう?」
「そんなに毎日聞きにくることがあるのかと不思議でしたから。しかも、かなり必死な形相だったし。」
「あはは、そうだったかな。」
「毎日、萱島さんを観察してるうちに、ただのキレイな人から、変わった人だなって認識になって、それから、この人、おもしろいなと思うようになった。」

彼の表情が少しだけ穏やかになる。
会話がキャッチボールになって、少し話しやすくなったのかもしれない。

私は私で、「おもしろい」と言われることには慣れていることに気づく。
いつも、由紀恵と涼子が口を揃えて言うときには否定しているけれど。
どうやら、知らず知らずのうちに、自分でも認めてしまっているらしい。
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