美人はツラいよ
驚いた表情の松田君に向かって、必死にまくし立てる。
「えっと、やっぱり、こんなのダメ。いくら、私が30を前にしてどんなに焦ってたとしても。松田君のことを好きになっちゃってたとしても。」
「…千景さん?」
遠慮がちに問いかける松田君の顔が赤く染まっていく。
「いくら、松田君が良くても、私はダメ。子供が出来たから結婚するとか、そんなのヤダ。いい大人が何言ってんだと思うかもしれないけれど、私はもっとちゃんと恋愛して、自然とこの人と結婚したいなと思えるようになってからじゃなきゃ結婚なんてできないよ。それに、ロマンチックなプロポーズにだって憧れるし、親にも堂々と紹介したいし、可愛いウェディングドレスだって着たいもの。それに、松田君も一時の感情で流されたら、きっと後悔するし…」
さらに話し続けようとする私を止めるように、ぎゅっと抱きしめられた。
見上げれば、耳まで真っ赤だけれど嬉しそうに目を細める松田君の笑顔があった。
「僕は、後悔なんてしたりしませんけど。萱島さんの提案には乗ります。」
彼はまた、ゆっくりと言葉を噛みしめるように話し出す。
「僕とちゃんと恋愛しましょう。頑張って、あなたに結婚したいと思ってもらえるような男になります。ロマンチックかどうかは分かりませんが、プロポーズもちゃんとします。」
「えっ、本気なの?」
「もちろん全て本気ですよ。あなたに純白のドレスを着せようなんて物好きは俺くらいですから、乗っておいた方がいいですよ。」
「なんだか、ひどい言われようだけど。」
決して優しくない言葉なのに。
ベッドの上でお互い裸、なんてムードの欠片もないのに。
涙があふれる。
その涙を彼が優しく拭う。
「萱島千景さん、僕とお付き合いしていただけませんか?もちろん、結婚前提です。」
「…はい、よろこんで。」
そう言った瞬間、まるでいたずらっ子のように笑った彼に、今日一番優しいキスで唇を塞がれた。