美人はツラいよ

二年後。


控え室の窓から見えるのは、まるで、おとぎ話に出てくるような森の中の小さなチャペルだ。

純白のドレスに袖を通せば、自然と笑みがこぼれた。

支度を終えると、すぐに部屋の扉がノックされた。
返事を返すよりも早く扉は開かれる。
そこへ、ずかずかと入ってきたのは、見慣れた顔の二人。

「わあ、やっぱり千景ちゃん、すごくキレイ!!」

まず感嘆の声を上げたのは水色のワンピース姿の涼子だ。
一歳になったばかりでヨチヨチ歩きの愛娘・花梨(かりん)ちゃんの手を引いている。
お揃いの水色のドレス姿の花梨ちゃんは、私の姿を見て嬉しそうに声を上げた。
年甲斐もなく一目惚れした、可愛らしいプリンセスラインのドレスは、小さなレディにも好評のようだ。

「ホントね。涙ぐましいダイエットと、エステの効果があったじゃないの。良かったわね。」

相変わらず素直には褒めてくれない由紀恵はクリーム色の留袖姿で、“人妻”らしい色気を放っていた。

「由紀恵、着物なんか着てお腹大丈夫なの?」
「大丈夫よ。帯は緩めに締めてるし、悪阻もほとんどないしね。」

そう、何を隠そう由紀恵は妊婦だ。知らされたときには驚いたが、彼女らしく「あんたも早く妊娠しないと、高齢出産は大変よ」という余計な一言をお見舞いしながらも、「早くしてくれないと、育休期間がカブらないじゃない」なんてこぼして、私に対するツンデレ振りは相変わらずだ。

「二人とも、来てくれてありがとう。」
「そんなの、当たり前じゃん。この日をどれだけ待ち望んだことか。」
「ほんとよ。私の作戦通りなら、こんなに待たされることなかったのに。」

涼子は早くも目に涙を溜めて、由紀恵はやはり悪態を付く。
親友それぞれに“祝福”をもらい、私は再び窓の外のチャペルに目を遣った。



私は、今日、ここで結婚式を挙げる。
人生で最愛だと思える人と。
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