美人はツラいよ
そんな二人の祝福を受け止めて、彼は意気揚々としゃべりだす。

「気の迷いで、二年も片思いしたりしませんよ。」
「しかも、結婚までさらに二年掛かってるし。とっとと私の立てた計画実行しちゃえばよかったのに。」
「正直、本気でそれも悪くないと思ったんですけどね。やっぱり、三十路女のため込んだ希望はすべて叶えてあげないと後が怖いなと思って、我慢しました。」
「今日からは解禁だから。頑張って、うちの子の同級生作って。」
「はい、了解です。」
「あっ、由紀恵ちゃんだけ、ずるい。」
「じゃあ、涼子も二人目作りなさいよ。」

明け透けなやりとりに、思わず顔をしかめる。

「ちょっと、そんな話やめてよ…」

挙式直前の感動に浸る時間を取り戻そうと声を上げれば、由紀恵から冷ややかな視線を浴びせられた。

「あら、何言ってるのよ。結婚したからって逃げられない保証はないのよ。子は鎹、って言うでしょ。やっぱり確実に捕まえておくなら、既成事実よ。」
「また、そんなことを…」

強気にまくし立てられて、呆れたような声を出した私だが、実際には核心を突くような発言のため、反論はできなかった。

確かに、結婚しても油断は出来ない。
私の方が五歳も年上だし。
あれからさらに年齢を重ねて、彼はますますいい男に成長している。
女は年齢が上がる度に、“商品価値”が下がるが、男はその逆なのだ。

私が、わずかに不安げな表情を浮かべたことに気が付いたのか、彼がにっこりと笑ってから、大きな声で宣言した。

「心配しなくても、こんな最高におもしろい奥さん、手放すわけないでしょう!」

その発言に、私以外の三人が揃って吹き出した。

「やっぱり、千景ちゃんの第一形容詞って…」

「「「“おもしろい”だよね~!」」」

だから、そこ、ハモるなー!!!
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