美人はツラいよ
「もしもし?美姫ちゃん?」
いつもと変わらぬ調子で電話に出た彼に、この一週間ずっと言いたくて言えなかったことをぶちまけた。
「田上さん、ズルいです。最後に自分だけすっきりして終わるなんて、最低です!」
「美姫ちゃん?よく言ってることは分かんないけど、もしかして何か怒ってる?」
「怒ってますよ。完全に言い逃げじゃないですか!田上さんは正直に告白して、すっきりしたかもしれませんが、私はモヤモヤして仕方ないです!ずっと好きだったけど、お見合いするからもう会えないって、どうして私がフられた気分になんないといけないんですか!!」
言い出したら、もう止められなかった。
悔しくて、情けなくて涙がでた。
私は、所詮彼にとって単に連れ歩きたいだけの女の子でしかなくて、彼はきっと人生の伴侶には私なんかよりもずっと良くできた、中身のある大人の女性を選ぶのだ。
おそらく、萱島さんのような。
私の言葉に、彼が言葉を詰まらせるのが分かった。
その一瞬の間で、私は我に返った。
何を言ってるんだろう。
これじゃあ、逆ギレもいいところだ。
「あの、すみません。どうかしてました。夜分遅くにごめんなさい。失礼しま……」
「……ちょっと、待って!」
慌てて電話を切ろうとした私に、今度は彼が声を荒げた。
遠くの方で、車のクラクションの音がしたのが電話越しに聞こえたのか、田上さんは心配そうな声で尋ねる。
「美姫ちゃん、今、もしかして外?」
「ええ、家のすぐ近くです。」
「じゃあ、角のコンビニで待ってて。すぐ行くから。」
電話は彼の方から一方的に切れた。