美人はツラいよ

コンビニの駐車場で待っていると、20分程で黒のSUVが駐車場に入ってきた。運転席のドアが開いて降りてきたのは、初めて見るスーツ姿以外の田上さんで、ダウンジャケットを羽織っている下は明らかに部屋着だと思われるスウェットだった。

入り口付近に立っている私を見つけて、駆け寄ってくる。

「美姫ちゃん、ちゃんと店内で待ってなよ。」

何を伝えたらいいのか、この20分間ずっと考えていたが、答えは出なかった。
それなのに、心配そうな顔で私の目の前に立つ彼を見たら、伝えるべき言葉はするすると私の口から出て行った。


「田上さん、私、結婚してあげても、いいですよ。」

「えっ、美姫ちゃん、何言って…」

田上さんの顔が今まで見たことがないくらい驚きに染まる。
私は、もう一度彼の目を見てはっきりと告げた。

「だから、お見合いなんてしないで、私を選んでください。」

ヤケクソでも気の迷いでもなくて、確かに私の意志で発せられた言葉だった。
なかなか素直に認められなかったけれど、悔しくて涙がとまらなかったのは、きっとそういうことだ。
私は、この人との居心地のいい関係を、どうしても失いたくないと思っているのだ。
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