美人はツラいよ
彼から返ってくる言葉を聞くのが急に怖くなって、視線を外して俯いた私に、彼もまた恐る恐る問いかける。

「美姫ちゃん、もしかして酔ってる?」
「今日は飲んでません。」
「正気?」
「正気です。」
「これって、夢じゃないよね?」
「試しに頬をつねりましょうか?」

最後の言葉に少しだけ笑ったら、すぐに彼に右手を取られた。

「じゃあ、つねってみて。」
「間違いなく痛いですよ、現実ですから。」
「でも、夢みたいだ。」

ようやく彼の顔に笑みがこぼれると同時に、私は彼の腕の中に抱き寄せられた。

「もしかして、こういうドッキリ?」
「…じゃないです。」
「明日になったら気が変わったり…」
「…しません。」
「どうしよう、まだ信じられない。」

ブツブツといつまでも嬉しそうに呟く彼が、鬱陶しくて、愛しくて、私は顔を上げて彼の唇を奪った。
それに応えそうになりながらも、慌てて体を離した彼を恨めしく見上げる。

「美姫ちゃん、ここ、コンビニの前だから!」
「じゃあ、キスしても恥ずかしくないところへ連れて行って。」

私はこの時ほど、長年の研究の成果である“小悪魔スマイル”が役に立ったと思ったことはない。
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