美人はツラいよ
二人揃って席を立ち、会計をしようとレジまで行けば、店員さんに「結構です」と微笑まれた。
「お会計はすでにいただいております。」
「えっ。」
「あちらの方に。」
店員さんの指さす方を見れば、カフェの入口近くに佇む田上さんの姿があった。
今日、私が千景さんに結婚報告することは伝えてあったので、頃合いを見計らってご馳走しに来てくれたらしい。
つかつかと千景さんが彼に近づいていって言う。
「田上さん、私の分まですみませんでしたねぇ。ご馳走さまでした。」
「何言ってんの。今まで散々お世話になった萱島さんに、ぜひともお礼がしたくてね。」
「しらじらしい!」
やはり、いまだに二人は犬猿の仲らしい。
「せっかく、お祝いの気持ちを込めて、今日は私がご馳走しようと思ったのに。」
「祝ってくれる気持ち、あったの?」
「そりゃ、ありますよ。美姫ちゃん“は”可愛い後輩です。」
やいのやいの言い合いながらも、この二人が仕事中のここぞという場面では息をぴったり合わせることを私は知っている。
「幸せにしないと、許しませんよ。」
「そりゃ、もちろん。」
「言っておきますが、田上さんに対しては、早く愛想尽かされればいいのに、としか思ってませんが、若くて可愛い美姫ちゃんにバツが付くのが忍びないので。」
「萱島、お前、相変わらずひでーな。そんなんじゃ、お前の方が若い旦那に愛想尽かされるぞ。」
「ご心配には及びません!しかも、私の名前は萱島じゃなくて、ま・つ・だ、です!!」
並んで歩く先輩二人の背中を追って、私も吹き出しながら早足で歩いた。