焦れ甘な恋が始まりました
 


✽ ✽ ✽



――――「ありがとうございました。編集が終わりましたら一度、ご連絡いたします」


長いインタビューを終え、満足そうな笑顔を見せたディレクターさんが挨拶をして帰った後は、どっと疲れを滲ませた社長だけがVENUSの事務所内に残った。



「……疲れた」

「お疲れ様です」



ソファーに雪崩れる社長の前に、そっと置いた淹れたての熱いお茶。


シワにならないようにとスーツのジャケットを受け取りハンガーで壁にかけてから社長に振り向けば、目が合った瞬間、とても柔らかな笑みを渡された。


その笑みに釣られて笑みを返せば「ありがと」と、短い返事をくれた社長。


そうしてそのまま湯呑みに口をつけて、喉を潤すと……



「…………はぁ、落ち着く」



今度は心の底から吐き出すような溜め息を吐いて、ソファーにその身体を沈めた。


 
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