焦れ甘な恋が始まりました
「……まぁ、お茶が美味しいのは確かなんだけど、落ち着くのはそれだけじゃなくて……」
「え?」
「それを含めた上で、今のこの空間が落ち着くっていうか、空間を作ってくれてる人に落ち着くっていうか……」
「?」
「うーん……、なんて言ったらいいかな」
まるで、淹れたてのお茶から昇る湯気のように、ふわふわと宙に舞う社長の言葉。
騒がしい館内のバックスペースにあるVENUSの事務所には社長と私の二人だけで、余計に今のこの空間が静かに感じるのかも。
たまたま私が担当したマスコミ対応が、初日の最終組で。
更には、その内容が社長に対するインタビューということだったので、私がその場に居合わせることとなった結果が今の状況を生んだのだけれど。
「……日下部さんは、鈍いんだか鋭いんだか、わからないね」
「……え?」
「仕事になると、あんなに的確に核心を突いてくるのに……ホント、それ以外は抜けてるっていうか、なんていうか……」
「?」
「まぁ、そんなところも俺にとっては、たまらない部分でもあるんだけど……ね」