焦れ甘な恋が始まりました
ダメ。ダメだよ、泣いたりしたら。
職場で泣くなんて……そんなの、いい年をしてみっともない。
こんなところで泣いたりしたら、せっかく社長に褒めてもらったのに台無しになってしまう。
唇を噛み締めて。
必死に瞬きをすることで涙を誤魔化すと、今日は一日手放すことのなかったVENUSのプレスが入ったファイルを握り締めた。
……ありがとう、なんて。
そんなの、社長に言ってもらえるようなことは、本当にしていないんです。
私はただ、当たり前のことをしただけで、一社員として普通に仕事をこなしただけ。
寧ろ、私の方こそ、社長に「ありがとうございます」って……
「私のことを見付けてくれて、自信を持てと背中を押してくれて、ありがとうございました」……と、そう何度伝えても、足りないくらいなのに。