焦れ甘な恋が始まりました
“ 目的地に着いたら ”
そう言う社長が、どこへ向かっているのかは、それからしばらくもしない内に想像がついた。
一度だけ……見たことのある景色。
高いビルの群れを抜け、辺りの景色が都会の喧騒を抜け出した頃には、ほんの少し開けた窓から流れ込んできた……潮の香り。
その香りに数ヶ月前と同様、年甲斐もなく胸を踊らせた私は、やっぱり以前と同じで社長の運転する車の揺れに、静かに身を任せて……
今度は誘われるように、そっと、目を閉じた。
✽ ✽
「着いたよ、日下部さん」
「ん……、」
けれど、私が覚えていたのは、そこまでで。
次に意識が浮上した頃には―――目の前に夜の海が広がっていて、驚きで身体が大きく跳ね起きた。
え……えっ!?
私、もしかして……いつのまにか眠って……!?