焦れ甘な恋が始まりました
「ごめん。もう少し寝かせてあげたかったんだけど、帰りが遅くなると明日もあるし、日下部さんが大変かと思って」
「す、すみません……!!私の方こそ、気が付いたら眠ってて……っ!社長の方が疲れてるはずなのに、こんな……本当に、すみません……っ」
背もたれに身体を預け、いつ買ったのかコーヒーを手に持っている社長を見て、一気に血の気が引いていく。
私は一体、どれだけ寝ていたんだろうと思ったら、心底恥ずかしくて……穴があったら今すぐ飛び込みたいくらい。
そ、そうだよ、時間……!
慌てて携帯を取り出して時間を確認しようとしたけれど、それは不意に投げられた社長の言葉に阻まれた。
「大丈夫。一時間も寝てないよ。ここに着いてからは、20分くらい」
「そ、そんなに……本当に、すみません……。私……失礼にも程があるし……もう、社長に合わせる顔がないです……」
俯きながら両手で顔を覆って答えれば、社長の優しい笑い声が落ちてきて、不躾にも胸がキュンと高鳴ってしまう。
結局、その笑い声に誘われるように顔を上げれば、やっぱり私を見て柔らかに微笑む社長の瞳と目が合って……
社長のその眼差しから、目を逸らすことができなくなった。