焦れ甘な恋が始まりました
「……なんだか、すごく久しぶりに来た感じがするね」
そう言いながら、夜の海を見つめる社長は宣言通り、以前と同じ場所に腰を下ろして息を吐く。
その背中を確認してから私もまた以前と同じように……ほんの少しだけ距離を開けて、社長の隣に腰を下ろした。
「……律儀だね、日下部さんは」
それはあの日に言われた言葉と同じなのに、どうしてか、胸が締め付けられるように痛んで、息をするのも苦しい。
縮まらない距離。
重ならない気持ち。
届かない、想い。
思い知らされるばかりの現実に、今度こそ、この恋の結末が見えた気がして――――
結局、私たちの今の不思議な関係に幕を下ろしたのは、社長だった。