焦れ甘な恋が始まりました
「……変わらないな」
「え?」
「今の日下部さんは、自信をなくしていたあの頃とはまるで違うのに……俺たちの距離は、あの時と少しも変わってない」
「、」
「それが、今の関係の答えなのかな、って。時々、考えることもある」
「……、」
「もう、これ以上は……近付くことは、許されないってことなのかな……。これ以上踏み込むことは、ただの迷惑なのか……」
困ったように笑いながら。
そんなことを尋ねる社長が何故か、泣いているように見えて、胸が苦しくなった。
……わかってる。わかってた。
下條さんの求める愛は、私の抱く気持ちとは違うことも。
――――“ 杏って、彼女っていうより母親みたいな感じで、一緒にいても全然ドキドキしないんだよね ”
そう。はじめから、そうだった。
社長が私に求めていたのは……母のような、愛。
母親が子供に注ぐような愛情で、私が抱くそれとは全くの別物だから。