好きの代わりにサヨナラを《完》
「クラシックなら子守唄になるけどさ……それじゃ、目覚ましにしかならない」

恭平は、ここで昼寝していたんだろうか。

髪に手をやって、気だるそうに起き上がる。

あたしのほうへ歩いてくると、グランドピアノに寄りかかった。



「なんか荒れてるね。男にでもフラレた……?」

不機嫌な顔をしたあたしを、恭平はグランドピアノの屋根に両肘をついて余裕な表情で見下ろす。

あたしは恭平には答えずに、視線をそらした。



「事務所に圧力かけられたら簡単に別れるような男だった?根性ないね」

あたしと蒼のこと、何も知らない癖に……

あたしは五本の指を使って、ジャーンと鍵盤を叩いた。
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