好きの代わりにサヨナラを《完》
「あんた、可愛い顔してそっちが素なわけ?」

愛想笑いも浮かべず真顔で冷たい視線を向けるあたしを見て、恭平は意味深に笑った。



「あんた、どうしてアイドルになった?」

あたしは、押さえつけていた鍵盤から指を離した。

恭平の思いがけない質問に、あたしは視線を宙に泳がせる。



「歌がやりたいなら、歌手になればいい。演技がやりたいなら、女優になればいいでしょ?どうしてアイドルなわけ……?」

考えこんでしまったあたしを、恭平はグランドピアノの上で頬杖をついて眺めていた。



「誰かに認められたいだけなら、別に男でもいいんじゃないの?」

自分でも気づいてなかった核心に触れられた気がして、あたしは泳がせていた視線をまっすぐ恭平に向けた。
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