月が満ちるまで
自転車で走ると、自分のまわりに風がおきる。
風に包まれて、風になっていく。
ひとつ道を逸れると、木立やゴルフ場の芝生が見える。
続いていく緑と、青い空。
ハルと競うようにこいでいたら、女の子から離れてしまっていた。
「な、ハルは浦川のことどうなんだよ」
ちら、と後ろを確認して、それでものんびり答える。
「オレ、タイプかも」
「やっぱりな。そんな気がした。どこがいいわけ」
「気ィ強いトコかな。あーゆーコがさ、オレだけに甘えたりすんのが弱いわけ」
「…知らなかった」
「そりゃそうだろ。オレ、海斗にだけは言わなかったんだから」
「なんだよ、教えてくれたって良かったのに」
ぐすんと鼻を触って、俺をみた。
「言えるわけないじゃん。中学でさ、オレが好きだったコは、海斗を好きだったんだからさ」
「え、知らないってそんなの」
「そうだよ。オレさ、相談とか乗ってたんだよこれでも。お前の情報を売ってたんだから。誕生日とか、どんな食べ物が好きだとか、どんなテレビ見てるとかさ」
あぁ、そういえば好きなテレビの話題で盛り上がったことがあったな。
あの子を、ハルは好きだったんだ。はきはきして明るい子だった。
でも告白はされなかった。
告白されてたらどうだったろう。とりあえず付き合っていたかもしれない。
「オレ、嘘ついてたんだ。海斗には好きな子がいるから美奈ちゃんは無理だよ、って
オレ……泣かしちゃったよ好きだったのに」
ハルはなにげなく空を見上げた。
思いだして胸が苦しくなっているんだ。
なにげない顔をしているけど。
「だからオレ、今度は好きなコができたら、絶対、絶対、好きって言うんだ」
「いいじゃん。すげー…いいよ」