月が満ちるまで
先に走って行ってしまったふたりを追いかけていくと、標識のでた曲がりかどに自転車を止めて待っていてくれた。
「おまたせ。偵察完了~」
明るい顔で宮原くんが呼んでいる。
「なに言ってるの。置き去りにしたくせに」
ちはやが噛みつく。
「違うよ。姫のために不審者を排除してました!ご安心ください」
「そうだよ~許してください姫。切っては投げ、切っては投げの大乱闘。もう自転車をこぐ元気もありません」
渡辺くんも、ちはやを拝むようにして許してもらおうとしている。
「ね、ね、風花ちゃんは許してくれるでしょ」
縮こまるようにした宮原くんが、上目遣いでこっちをみる。
「えーどうしよう」
こっちに振られても困る。
まだ機嫌のなおらないちはやが、ギロッとにらむ。
「もおっ風花がいいなら、風花と行けば」
「違うよ、オレが誘ったのは、ちはやちゃんだよ」
声が大きかった。
びっくりするくらい大きくて、真剣だった。
「ごめん。ちゃんと謝ればよかった。置いていくつもりはなかったんだ。ふざけたら笑って許してくれる気がしたから…ほんとにゴメンね…」
ペこりと頭を下げている。
体の大きな子供みたいだった。
「許してあげたら、ちはや」
うつむいたちはやの顔に髪ががかって、表情がよくわからない。
少し、鼻が赤い。
「今度だけ、許してあげる…」
「ありがと~う」
そして渡辺くんに親指を立ててみせる。
いつもの、ふにゃんとした笑顔より数倍、嬉しそうな笑顔で。