月が満ちるまで

ボートが、こつりと桟橋にたどり着くと、ちはやちゃんはごしごしと目をぬぐった。

目のふちと、鼻があかい。

「行こうか」

手を出すと、そっと手のひらを重ねる。
ぎゅっと握りしめて、ボートから桟橋へ移る。




こんなに、素直なちはやちゃんは見たことがなかった。




抱きしめたら
また怒るだろうなぁ




小さい手だ。
柔らかくて白い。




この手を握って
この手の主をこれから幸せにしたい。


オレ自身も不安にならないように


何度でも言うよ




ちはやちゃんが好きだよ




ちはやちゃんがこの言葉を信じてくれるまで。


何度でも言うから。

だから信じてほしい。



好きだよ



めったに見れない萎れた姿も愛おしい。

「オレを頼ってね」

「ばかなこと言わないでよ」

「今度、泣きたくなったら言って。タオルにハンカチにティッシュ持って駆け付けるから」

「そんな大袈裟なのはヤダ」

ふふっと笑いがもれる。

「了解しました、姫。不詳宮原晴臣、この体で姫をお慰めいたします」

「なんだかヤらしい」

「いつでも、オレの胸はあいております!」

「そーきたかぁ……くさいからね、それ」

「いーよ。ちはやちゃんだけわかってれば」



いつでも
どこでも



思いが絆を作っていく。



思いで君と繋がっていく。

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