月が満ちるまで



「あれ…?」

桟橋から歩いてくるちはやとハルくんは、手を繋いでいた。

「おせーよ、お前ら」

並んでベンチに座っていた渡辺くんから声がかかる。
からかっているけど、声は優しい。嬉しさを隠せないみたい。

「お待たせ。風花ちゃん」

「たいして待ってないからね。大丈夫」

「おい、俺にはなしかよ」

「ったり前。野郎に下げる頭はないんだよ」

ちはやを見ると目元と鼻が赤かった。

「よかったね」

泣いてしまうくらい感動したのかな。
ハルくんなら、ちはやを大切にしてくれそう。

「あのね、これは宮原が勝手に握ったままなの。ボートを降りる時から離さないんだから」

振り払えないんでしょう。
だったら、肯定だね。



好きだって



良かったと思える。
ちはやは、優しい。



意外かもしれないけど、優しくて世話やきなところがある。

教室で初めて会ったとき、「ひとりなん?」そう話しかけてきた声を覚えている。
自分の世界にこもるわたしにも出来た友達。

ちはやは、わたしをそのまま受け入れてくれた。

自分の見たテレビを話すけど、絶対見て、なんて言わない。
知っている楽しいことを話している。たまたまそれがテレビだった。そんな感じだった。

隣のおじさんが面白かった、弟がこうした、そんな話をしていた。



これからは他の話も加わるのかな。

すごく、すごく嬉しい

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