キスは目覚めの5秒後に

ご飯をかき混ぜてみると炊きたてのいい香りが漂い、ふっくら美味しそうな出来あがりだ。


「ツヤツヤでいい感じ、成功だわ!」


ダイニングテーブルに雑貨屋さんで購入したキャンドルを置いて、ベージュのランチョンマットを敷く。

出来あがった料理を器に盛り付けてテーブルにセットすれば、立派な食卓が出来あがった。

ロールストランド社の食器“モナミ”の青い花模様が、和食にとてもマッチしている。


「うん、なかなかいい感じじゃない?」


記念に写真を撮りたいくらいの出来栄えだ。

残念ながらその手段がないけれど。


「橘さーん、お食事ができましたよー」


呼びながらキャンドルに火を点す。

スウェーデンの一般家庭では、キャンドルは日常的に使う素敵アイテムだ。

キャンドルの柔らかな光が、部屋に暖房的なぬくもりと間接照明的な明るさをもたらす。

それに、キャンドルの火は心を落ち着かせるのだ。


「おおすごいな・・・美味しそう」

「橘さん、日本酒飲みますか?」

「なんか和装したくなるな」

「それ、褒め言葉ですか?」

「勿論だ。飲めるか?乾杯しよう」

「はい」


互いにワイングラスにお酒をつぎあって、コツンとグラスを鳴らした。

橘さんはお酒を一口飲んだあと、肉じゃがに箸をのばした。

私にとっての緊張の一瞬だ。彼の口に合うだろうか。


「美味い!まさか、この家で手作り料理が食べられるとは思わなかったな。ありがとう」

「良かった、口に合って。どういたしまして、です」


自分でも箸をのばしてみる。

味見はしたけれど、鍋にあるときとまた印象が違うものだ。

うん、いい味が染みてて、美味しい!

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