キスは目覚めの5秒後に
英語で書かれた書類を見ながら精一杯に頭を働かせていると、横に人が立ったのが目の端に映った。
またルドルフだろうか。
彼には隙を見せないように、既然とした態度を取らなければ。
「なにか用ですか?今忙しいので手短にお願いします」
きつめに言うと、予想に反して「わかった。5秒で話す」と聞きなれた声がして心臓が跳ね上がった。
「橘さん!すみません、私・・・」
「竹下美也子、喜べ。バッグが見つかったそうだ」
「・・・え?」
一瞬、時が止まった気がした。
橘さんの微笑む顔を、口を開けたまま見つめる。
「うそ、本当に!?」
「たった今警察から連絡があったぞ、良かったな」
「信じられない!どこにあったんですか!?」
「わからん。警察に確認と引き取りの手続きに来てくれとのことだが、今日の帰りに一緒に行くか?」
「はいっ、行きます!」
見つかったんだ!すごい!もうダメかなって諦めかけていたのに。
中身はどれだけ無事なのだろうか。
空っぽだったりして・・・期待しないでおこう、うん。
「はい、これが見つかったバッグです。中身に間違いないですか。ないもの、加わってるものを教えてください」
ちょっと太めな警察官が、テーブルの上にバッグと中に入っていたものを並べていく。
オレンジ色のショルダーバッグ。
リボン模様のハンカチ。
ポケットティッシュ。
花柄の手帳。
パスポート。
順番に並べられたそれらを見て、少しの間呆然とする。
まさか、パスポートが戻ってくるなんて!!
「間違いなく、私のです!」
財布と携帯がなくなっているけれど、あとは全部私のものばかりだ。