キスは目覚めの5秒後に

トクトクと高鳴る胸をおさえて、橘さんのエスコートに従う。

俺以外・・・なんて、誰にも言われたことがない。

橘さんにとっては深い意味がないのだろうけど、ときめいてしまう。

でも、隙って・・・私って、そんなに話しかけやすい人なんだろうか。


「ミヤコー!」


会場に入るとすぐ、エレンが私を見つけて駆け寄ってきた。

体のラインが出る黒のシックなドレスがとてもよく似合っていて、いつもに増してチャーミングだ。


「ミヤコ、すごくセクシーよ!赤いドレスがよく似合ってる!」

「ありがとう。橘さんが選んでくれたの」

「わお、流石タチバナね。ミヤコのことよくわかってるわ」


エレンは、私の髪から靴まで、全部を見てはしゃいでいる。

オフィスでジーンズオンリーだった私が、エレガントスタイルなのがすごく嬉しいみたいだ。

ワンパターンなコーディネートだったから、この服しかないの?って気にしていたのかもしれない。

エレンは知り合いを見つけたらしく、またあとでね!と人の中に消えていった。


そして時間になり軽やかな音楽が流れ始め、司会に紹介されて本日の主役であるここの娘さんがダンスホールの真ん中に出てきた。

ゴールドのドレスを着てて、頭につけたティアラが明りに照らされてキラキラと輝いている。


「まさか、日本人ですか?」

「言ってなかったか?」

「聞いてないですっ」


ろうそくの火が点されたケーキを乗せたワゴンがころころと彼女の前に来て、音楽が鳴り始めた。

どこのバースデーパーティでも変わらない、みんなで祝いの歌を合唱する。

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