キスは目覚めの5秒後に
「うーん、だけどすっごくイジワルなのよ?」
性格に問題があることをアピールしてみる。
彼はかなりのS男だと思うのだ、彼女も苦手なはず。
「イジワルがなによ。イジワルし返してやるわよ。私だったら、即彼氏にして離さないわ」
「すごーく遠距離でも?それに、非日常だからこそ、生まれた思いかもしれないじゃない。頼れるのが彼しかいなかったし、そんなの不確実だわ。彼が帰国する頃には、冷めてるかもしれないのよ」
「うーん、それは一理あるかも。リゾート地で知り合った男がすごくかっこよく見えるけど、街で会うとガッカリ的なね・・・うん、経験あるわ」
奈帆が昔を思い返すように目を伏せると、店員がテーブルの横に立った。
「お待たせしましたー!梅酒割です!」
「あ、私も同じのください」
「はい、まいどありー!!」
このお店の店員さんたちは、注文するたび大きな声でこう言う。
とくにこの店員さんは、酔っ払いたちが出す煩い話声にも全然負けていなくて、舞台俳優さんみたいに声が通る。
この元気さは、この店の中では一番かもしれない。
こっちまで気分がよくなって、元気になるのだ。
この子目当てで来る女性客も多いと思う。
タレントに似ていてちょっとカッコイイ感じの彼に、奈帆はにっこり笑いかけている。
幾多の合コンで見せてきた、男を落とす本気の笑顔だ。
彼が来るたびにそうしているから、どうもお気に入りのよう。