キスは目覚めの5秒後に

そして季節は移ろっていき、スウェーデンで過ごした日々から一年が経った。

私は今、デザインチームのリーダーを任されていて、後輩の育成に力を入れている。


「美也子さん、デザイン見てください」


頬を赤くして恥ずかしそうにしてるこの子は、つい最近異動してきた新入社員だ。

お願いしますと渡されたデザイン画は、四角にうさぎの耳っぽいものが付いていて、紐のような長い線がにょろにょろと描かれている。

パッと見では、これが何なのかちっともわからない。


「これは、うさぎの耳?」

「はい。スマホを立てて充電できるものを考えたんです。ここの穴にいつも使ってる充電コードを入れてくるくる巻いて、そのままコンセントにさして壁にピタっと立てられるんです。で、耳をつけてかわいくしてみました!」

「なかなかいいわね、すごいじゃない」


絵からは良さがさっぱり伝わって来ないけれど、壁にさして立てられる充電器は需要があるかもしれない。

でも、スマホのアクセサリーは既にたくさん出てきているから、似たようなものが市場に出ているかも。

けれど、もっとアイデアを詰めて、うちにしかないものを足せばプレゼンまで持っていけそうだ。


「これ、デザインを何種類か考えてみてくれる?それで、ポイントに説明の文章を入れてほしいの。上司に見ていただくから」

「はい!」


嬉しそうに顔を輝かせて、足取りもウキウキと席に戻っていく。

みんなに、よかったね!って話しかけられて照れたように笑っている。

私にもあんな初々しい時期があったな・・・。



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