キスは目覚めの5秒後に

デザインをあれこれ考えて出しても、商品化できるのは極僅かだ。

その僅かなものを試作して何度も改善して、商品になったときの達成感はなんともいえない。

私がこの仕事をやめられない理由のひとつでもある。


「美也子。今日の合コン、参加でいいでしょ。返事しておくわよ」


奈帆が私のデスク傍を通るついでに、声をかけてきた。

段ボール箱を抱えていてとても大変そうだけど、立ち止まって私の返事を待っている。


そうだった、今日は前から誘われていた合コンの日だった。

いまいち、気乗りしないけど・・・。


「ん~、どうしても行かなきゃ駄目?」

「ダ~メ。もうそろそろ覚悟決めて彼氏作る努力しなさいよ。相手は一流企業のエリート社員なのよ。こんなチャンス滅多にないんだから。私たち、もう27歳になるのよ」


ぼやぼやしてると後輩たちに先を越されてしまうわよ!と迫力満点な顔で脅してくる。

確かに私も奈帆もアラサーだけれど、そんなに焦っていないんだけどな。

今は仕事が楽しいし、なにより忘れられない男がいる。

彼よりもイイ男じゃないと、恋は出来ないと思う。

今日の合コンでそんな男に出会えるだろうか。


「わかった。参加してみる」


頷いて見せると、奈帆は満足そうに笑った。




「竹下美也子です。雑貨のメーカーに勤めています」


お決まりの自己紹介をして合コンが始まった。

奈帆の言っていたとおり、みんな名前を聞いたことのある企業にお勤めで、女子なら一度はお近づきになりたい感じの人ばかりだ。

私の前に座っている人がしきりに話しかけてくる。

穏やかな話し方で、流石一流企業ともなると社員にも品があるように思える。

こんな人とお付き合いしたら、きっと平穏で優しい日々が送れるだろうな。

でも、なんか物足りなさを感じてしまう。きっと、好きにはなれない。

< 70 / 75 >

この作品をシェア

pagetop