キスは目覚めの5秒後に

定期的に席替えをして、まんべんなくお話をして合コンがお開きになった。

会計を済ませて外に出ると月の明りが強いことに気が付いて、見上げた月の美しさに思わず声が漏れた。


「うわあ、満月だ。綺麗」

「ああ今夜はスーパームーンですね。素晴らしいな」

「スーパームーン?」

「ご存知ないですか?月の軌道が地球に近いんですよ。そのせいで、いつもより月が大きく見えるんです」

「そうなんですか。知りませんでした」


満月、か・・・あの夜も、確かこんなふうに月が綺麗だったっけ。


「竹下さん、もう1件いきませんか?この近くに、いいお店を知ってるんです」

「へ?」


失礼ながらも誰だっけ?と思ってしまった。

いや、さっき合コンにいた人で、お話したことは覚えているけれども。

奈帆を探すと、彼女も誰かに掴まっていて、笑顔で話をしている。


「いえ、私はもう帰ります」

「ああじゃあ駅まで送っていきますよ。女の一人歩きは危ない」


一人で大丈夫ですと何度断っても食い下がってくる。

とうとう根負けして、駅まで一緒にすることにした。


お店のあった小道から駅に近い通りに出る。

道の両側にあるのは深夜まで営業するお店ばかりで、道行く人も多い。

午後10時、繁華街はまだまだこれから賑わっていくのだ。


「竹下さんは、お付き合いしている人がいるんですか」

「え?いません」

「良かった。なら、俺なんかどうですか?かなりお得物件だと思うんですが」

「お得?」


失礼だけど顔をまじまじと見つめてしまう。

自分でそんなふうに言うなんて、かなりの自信家だ。

送ると言うのを何度も断ったのに、脈なしと伝わってないんだろうか?

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