危険な愛を抱きしめて
「由香里!
 静かにしていると言うから、病室に入ることを許可したんだぞ?
 なのに、この騒ぎはなんだ!?」

 由香里たちの叔父は。

 パリッとした、白衣を着た、少し太目の医者だ。

 とても若く。

 立場的には保護者でも『親』というよりも、兄弟程度しか離れていないように見える。

 それでも、彼の言うことは絶対なのか。

「……でも……」

 と由香里はうつむいた。

 そんな姪を睨んで、彼は言う。

「すまないね。
 村崎君。
 調子は大丈夫かい?
 ……なんだ?
 点滴が外れているじゃないか!」

 言われて、見れば。

 さっき、針が抜けたまま放って置いた傷から、血が滴ったままだった。

 彼は、慌てて、オレの手から流れ続けていた血を止める。

「もう、病室から出ていけ……由香里!」

 医師である叔父に言われて、由香里は、唇を悔しそうにかむと、涙を拳で拭いて、病室を乱暴に出て行った。

 その姿が妙にはかなげで。

 複雑な気分で、ため息をついた時。

 オレの腕の処置をしていた医師が、困ったように顔をあげた。

 
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