危険な愛を抱きしめて
「本当にすまないね。
 由香里は、時には口よりも手が早い、乱暴者ではあるのだけど……
 普段は、めったに騒がないし、他人にこんな絡み方はしないんだ」

 本当に、困ったなぁ、という顔の叔父に、笑ってみせた。

 ……少しだけ。

「……判ってる。
 由香ネェとは、長い付き合いだし。
 最近は、会ってなかったけれど……」

 ヒトのコトを、散々素っ気ないとか言っている割には、由香里自身だって実は。

 モノごとをだいぶさめた目で見てる……と思っている。


 それは。

 だいぶ前に、両親を事故で亡くして、薫と二人、取り残されてしまったからなのかもしれない。

 普通の女の子みたいに、ちょっとやそっとのコトで感傷に流されていたら、やっていけないのかもしれない。



 でも。




 それにしたって、このオレのココロまで踏んづけていかなくても、いいのに、くそ。



 血で汚れたシーツを取り替えてもらい。

 発作を起こした今日は、一晩病院に泊まるように、と言われ。

 ついでに、ベッドに追い込まれながら、オレは、思う。





 ……弱虫、か………









 
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