腹黒王子に秘密を握られました
 



印刷会社から届けられたポスティング用のちらしを、ひとり黙々と折り続ける。



次の週末に内覧会を開く予定の物件のチラシは、近隣のマンションを中心に配るつもりなのでものすごく量が多かった。

事務所のデスクではスペースが追いつかず、仕方なく休憩室の大きなテーブルを使ってチラシを三つ折りにしていく。
綺麗に折り目をつけるようにピッと指先を滑らすと、紙の端に指をこすってしまい、一瞬するどい痛みが走った。

「……いっ」

慌てて自分の人差し指を見る。
指先に走った白い線。
そこからじわりと血液がにじみ、ぷっくりと赤い玉をつくる。

……あぁ、やっちゃった。

ため息をつきながら、血のにじむ指先を口に含む。

こんな気分の時に単純作業なんて辛い。
無心に仕事をしているつもりが、いつの間にか金子のことばかり考えてる自分がいる。
ほんと、バカみたい。

ぽつりとつぶやいて、指から唇を離す。
微かに鉄の味のする唇を舐めてから、立ち上がった。

このまま作業を続けたら、ちらしが血でよごれちゃう。
たしか自分のデスクに絆創膏があったはず。

そう思いながら事務所に向かうと、柴崎くんと目が合った。


 
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