腹黒王子に秘密を握られました
「どうしたんですか?」
にこにこと話しかけてくる相変わらず愛想のいい柴崎くんに、「なんでもない」と言いながら自分のデスクに直行する。
「絆創膏? 指ケガしちゃったんですか?」
「大したことないから」
「でも、右手の指に絆創膏って、ひとりじゃ貼りづらいでしょ。俺貼ってあげますよ」
そう言って、私の手から絆創膏を取り上げる。
確かにひとりじゃ貼るのは大変だから、素直に指を出してお願いすると、
「相変わらず、友野さん男の人をはべらせてるんですねー」
と、棘のある言葉をかけられた。
はぁ? 誰もはべらせてなんていませんけど?
と、むっとしながら振り返ると、相楽真子がいた。
「金子さんと別れたら、次は柴崎くんですかー? ほんと節操ないって言うか、尻軽っていうか。女も三十近づくと、遠慮がなくなって怖いですよねー」
彼女はそう言いながら、ばさりと郵便物をカウンターの上に置く。
「別にそんなんじゃ……」
「そうですか? 会社のみんな言ってますよ。エリートの彼氏と二股かけて金子さんと付き合ったくせに、あっという間に別れるとかほんとありえないって。ろくに仕事もしないで会社に男漁りにこられても、迷惑なんですよねー」
相楽さんはそれだけ言うと、さっさと一課から出て行った。
「わお、女のバトルこえー」
それを見ていた柴崎くんは、けらけらと笑いながら私の指に絆創膏をまいてくれた。