腹黒王子に秘密を握られました
「最悪……」
誰の仕業かなんて、考えるだけ無駄だ。
破られたり汚されたりしてないだけ、助かった。
あきらめてさっさとやってしまおう。
そう思ってしゃがみこんだけど、じわりと目頭が熱くなる。
どうして、どうして、どうして。
こんなくだらない嫌がらせを、ずっと受け続けないといけないのかな。
さっさと拾って折ってしまわなきゃ、家に帰れないのに、どうしてもやる気が出なくてその場で膝に顔をうずめじっとうずくまる。
するとコツリと足音が聞こえた。
こっそり顔を上げると、綺麗な長い指が床からチラシを拾い上げるところだった。
「金子さん……」
丁度外回りから帰ってきた金子が、コートを着たままの恰好でしゃがみこみ、落ちたチラシを拾い集める。
「どうした、これ。誰かにまき散らされたのか?」
床一面のチラシの前でしゃがんでいた私を見て、なんとなく事情は悟ってしまったんだろう。
心配そうな表情でそう聞いてきた。
「別に、なんでもないです。自分でやっちゃったんです」
取り繕うようにそう言うと、金子が不機嫌そうに眉をひそめた。
「本当に?」
しゃがんだままの私のことを、かがんでのぞきこんでくる。
「本当です。金子さんには関係ないんで、大丈夫です」
そうやって優しくされると泣いてしまいそうで、強い口調でつっぱねる。
「関係ないってお前……」
「放っておいてください」
金子さんの手から、拾ってくれたチラシをひったくるように奪い、背を向けた。
そうでもしないと弱音を吐いて甘えてしまいそうだったから。
私は必死で涙をこらえた。