腹黒王子に秘密を握られました
「私がオタクだって言いふらしたいなら、好きにすれば」
「は……、オタク?」
「言っとくけど私、オタクどろこか、がっつし腐女子だから。水と米と少しのホモさえあれば、それだけで生きていけるくらいの、筋金入りの腐女子だから」
聞いていた相楽さんが、突然自分がオタクだと言い出した私に、驚いて目を丸くした。
「海外勤務のエリートと付き合ってたなんて根も葉もない嘘だし、金子さんとだって頼まれて恋人のふりをしてただけだから。休み取った日曜は同人誌即売会とかイベントでひたすらストイックにオタク活動してたし、三次元の男に媚び売る暇あるなら漫画読み漁りたいし、イベントに朝から並びたいし、グッズ集めに走り回りたいし。コロコロ男変えるビッチどころか、三次元の異性と手もつないだことない恋愛経験ゼロの腐女子だし、付き合ってるふりをしてる金子さんのこと、いつの間にか本気で好きになっちゃうバカだし……」
言いながら、興奮しすぎて涙がぽろぽろ溢れてきた。
熱い涙が頬をつたい、パタパタと落ちていく。
「そんな自分を気持ち悪いって、変人だってわかってるけど、でも、それでも……っ」
そこまで言って、もうすべてがどうでもよくなった。
驚いた顔で固まっている柴崎くんを睨み、持っていたゴミ袋を強引に押し付けた。
「もう、帰るっ」
「は?」
「私もう帰るから。あとはよろしく」
それだけ言って、ロッカーのバッグを引っ掴み、大股で会社を出ていく。
……私の人生、完全に終わった。
入社してから五年間必死に隠してきたのに、自分から腐女子だってばらしてしまった。
この話はあっという間に会社に広がるだろう。
明日から、面白おかしく言われるんだろうな。