腹黒王子に秘密を握られました
この営業所の中でもとりわけ高額な物件を扱うこのフロアには、高価な観葉植物や胡蝶蘭が並んでいる。
霧吹きと布きんを手に持ち、葉を一枚一枚拭いていく。
せっかくフロアにゴミひとつ落ちていなくても、植物が枯れていたりホコリがたまっていたら台無しだ。
それに葉を綺麗に拭いてあげると、緑が色鮮やかになって気分がいい。
ひとつひとつの鉢植えの様子を見ながら、こっちはもう少し日当たりのいい場所に移そうかなとか、そろそろ液肥をあげなきゃな、なんて考えていると、背後から視線を感じた。
恐る恐る振り返ると、そこにはやっぱり金子敦。
「金子さん、どうかしました?」
「いや、花のお世話をする姿もいいなぁと思って」
「……ありがとうございます」
外面バージョンの王子様スマイルでそう言われ、思いっきり顔がひきつる。
くっそ、こんな爽やかな顔をしてるけど、腹の中は真っ黒の性悪男だって、みんなに言いふらしてやりたいっ!
そんなことをしたら、もれなく私の本性も暴露されるだろうから言えないけど。
「十時からマンションの売却希望のお客様が来るから、お茶出しお願いできる?」
「はい。現地で商談ではなく、事務所に来られるんですね」
「まだそこで暮らしてるから、あちこちの不動産屋に部屋を見られるのは抵抗があって、机上査定で条件のよさそうな会社に絞りたいらしいよ」
「わかりました」
金子の言葉に頷いた。