腹黒王子に秘密を握られました
「そうなんですよね。手放すのは少しさみしいんですが、このまま空にしておくのももったいないし」
「この家もひとりぼっちでいるより、誰かが住んでくれた方が、きっと嬉しいと思いますよ」
キッチン脇の立派な木の柱。うっすらと背比べの跡の残る木目を撫でながらそう言うと、くすりと笑われた。
「不動産屋さんって、家の気持ちもわかっちゃうんですか?」
「あ、すいません。変なことを言って」
慌てて柱から手を離し、ぺこりと頭を下げる。
仕事中だっていうのに、この家の持つ温かい雰囲気に、つい気が緩んでしまった。
「いえ、せっかく思い出の詰まった家を売るなら、そうやって家の気持ちまで考えてくれるような人に、お任せしたいなと思っちゃいました」
「ありがとうございます。もし我が社に任せていただけるのでしたら、少しでもいい買い手が見つかるように、頑張ります」
そう言いながら、リビングから庭をながめた。
西向きの窓にはこの時間直接光が届かないけれど、庭に面して立てられた白い大きな塀が陽の光を反射して、庭を明るく照らしていた。