腹黒王子に秘密を握られました
「いいお家でしたね」
私が助手席でそう言うと、ハンドルを握る金子が同意するように頷いた。
「そうだな、立地条件はイマイチだけど間取りがいい。築年数的には取り壊しもあるだろうけど、あの間取りならある程度リフォームしてから売るか、現状のまま買い手を見つけて委ねるのもいいか……」
「私は現状のままの方が好きです」
思わずそうつぶやくと、金子が横目でこちらを見た。
「あ、べつに変えてほしくないって言ってるわけじゃないですよ! 買った人が住みやすいことが一番大切だってわかってます」
「じゃあ、なんだよ」
「母からよく言われてたんです。笑い声を聞いてきた柱は柔らかく温かくなるし、怒鳴り声ばかりを聞いてきた柱は固くて冷たくなるって」
「なんだ、それ」
「うちの実家、田舎で林業やってるんですよ。木は切られて建材になってからも呼吸をするから、温かい家族の住む家の柱は、その家庭の温かい空気を吸っていつまでも優しく家を守ってくれるって、よく言ってました。ウソかホントかわからないですけど」
私がそう言うと、金子は驚いたように小さく肩を上げ、こちらを見た。