腹黒王子に秘密を握られました
「この仕事をするようになって、どんなに高級なマンションでも淀んだ空気の部屋ってあるし、逆に日当たりが悪いはずなのにどこか居心地のいい部屋もある。そいういう部屋を見ると、今まで住んでいた主の気配を、壁や柱が覚えているのかもしれないなって思うんです。母が言っていたのは、こういうことなのかなって」
「……あぁ、わかるななんとなく」
いい歳してなに夢見がちなことを言ってるとバカにされるかと思ったけれど、金子は少しも笑うことなく、静かに頷いた。
「一歩部屋に入って、気持ちが沈むような家も確かにある。そういう家はどんなに条件がよくても、なかなか買い手がつかなくてどんどん値が下がったりすることあるな」
「今回の家は、その逆ですよね。なんとなく、穏やかな気分にしてくれる。だからあのままの空気を気に入ってくれる買い手を見つけてあげたいなって」
「……お前、仕事に私情を挟みすぎ」
「すいません」
やっぱり怒られたか、と肩をすくめると、ぽんと頭を叩かれた。
一瞬だけ触れた手は、すぐにハンドルを握り直す。