恋の魔法と甘い罠Ⅱ
駅を出て途方もなく歩きながらも脳裏に浮かんでくるのは、恋人のようにくっつきながら歩いている二人の姿。


ずきずきと痛む胸。
熱くなってくる瞳。
歪んでくる視界。


そしてふらふらと覚束なくなってくる足取り。


ちょうど通りかかったタクシーを停めて乗り込んだ。


そして向かう先は晴希さんと住んでいる家ではなかった。


きっと晴希さんは真っ直ぐ家に帰ってくる。


出張のときは大抵そうだから。


けれど、今は冷静に晴希さんの顔を見る自信がなかった。


普段通りに会話できる自信もなかった。


だからタクシーの運転手さんには、無意識に他の場所を告げていた。
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