Engage Blues





 神話クラスの迷信と思ってた。



「慶さん……?」


 かすれた声で名前を呼ぶと、ハッと我に返ったようだった。


「しまった」

 慶さんは掌で両目を覆う。



「普段は意識しても発動しないんだが……殺気立った空気を感じると、つい条件反射で」


 珍しく狼狽するような声音だった。
 どこか怪我はしてないか心配になって駆け寄る。


「慶さん、怪我は?」


 声をかけると、慶さんが覆っていた手を離す。
 再び現れた双眸は、いつもの漆黒に戻っていた。



 ……えーと、どういうことなんだ?

 予想外の出来事に頭の回転がついていかない。
 ぐるぐると現状を処理している最中、そっと手首を握られた。



「梨花の秘密って、まさかこれのことか?」



 そう訊ねられても、すぐに返事ができなかった。


 というか、慶さんって……





「いやー。俺の情報も、まだまだですね」


 新しく割って入る明るい声に、振り返る。





< 119 / 141 >

この作品をシェア

pagetop