Engage Blues
神話クラスの迷信と思ってた。
「慶さん……?」
かすれた声で名前を呼ぶと、ハッと我に返ったようだった。
「しまった」
慶さんは掌で両目を覆う。
「普段は意識しても発動しないんだが……殺気立った空気を感じると、つい条件反射で」
珍しく狼狽するような声音だった。
どこか怪我はしてないか心配になって駆け寄る。
「慶さん、怪我は?」
声をかけると、慶さんが覆っていた手を離す。
再び現れた双眸は、いつもの漆黒に戻っていた。
……えーと、どういうことなんだ?
予想外の出来事に頭の回転がついていかない。
ぐるぐると現状を処理している最中、そっと手首を握られた。
「梨花の秘密って、まさかこれのことか?」
そう訊ねられても、すぐに返事ができなかった。
というか、慶さんって……
「いやー。俺の情報も、まだまだですね」
新しく割って入る明るい声に、振り返る。