私は、アナタ…になりたいです…。
電車を降りると、田所さんはスルリと手を離した。
「また外で会うんだけど、ここでは繋いでおかない方がいいだろうから」
人目を気にする私に合わせてくれる。
だけど、残念そうな顔をしているのが分かって胸の奥がきゅっと痛んだ。
「はい…まあ…」
同意する自分を素直じゃないな…と呆れる。
包み込まれていた左手が、彼の温もりを求めているのは確かなのに。
改札を抜ける人の後を追いながら、帰るなら今のうち…と考える。
そんな気など疾うに無くなっているくせに、どうしてそんな事を思うんだか。
観念しながら後をついて歩く。夕方のラッシュ時の混雑ぶりはどこの駅舎でも同じ。
田所さんは時々後ろを振り返っては、私が人並みに押されてないかを確認してくれてるようで、その親切心は返って私の心を重くさせた。
駅前の広場に出ると金曜日の夜ということもあって、学生のグループや社会人のグループが輪を成して話し込んでいる。
待ち合わせに指定されたモニュメントの付近にも大勢の待ち人が立ち並んでいた。
田所さんは少しだけ先に着いて、モニュメントの台座を背にスマホをいじる。
いかにも誰かと待ち合わせです…という態度に、トクン…と胸の奥が高鳴った。
近くに寄っていくと、フッ…と笑顔を見せてくれた。
背の高い彼が少し背中を丸めている姿は、返って格好良さが増すだけのような気がしてならない。
……私みたいなのを本気で相手にするような人じゃない。
この人は…。
「また外で会うんだけど、ここでは繋いでおかない方がいいだろうから」
人目を気にする私に合わせてくれる。
だけど、残念そうな顔をしているのが分かって胸の奥がきゅっと痛んだ。
「はい…まあ…」
同意する自分を素直じゃないな…と呆れる。
包み込まれていた左手が、彼の温もりを求めているのは確かなのに。
改札を抜ける人の後を追いながら、帰るなら今のうち…と考える。
そんな気など疾うに無くなっているくせに、どうしてそんな事を思うんだか。
観念しながら後をついて歩く。夕方のラッシュ時の混雑ぶりはどこの駅舎でも同じ。
田所さんは時々後ろを振り返っては、私が人並みに押されてないかを確認してくれてるようで、その親切心は返って私の心を重くさせた。
駅前の広場に出ると金曜日の夜ということもあって、学生のグループや社会人のグループが輪を成して話し込んでいる。
待ち合わせに指定されたモニュメントの付近にも大勢の待ち人が立ち並んでいた。
田所さんは少しだけ先に着いて、モニュメントの台座を背にスマホをいじる。
いかにも誰かと待ち合わせです…という態度に、トクン…と胸の奥が高鳴った。
近くに寄っていくと、フッ…と笑顔を見せてくれた。
背の高い彼が少し背中を丸めている姿は、返って格好良さが増すだけのような気がしてならない。
……私みたいなのを本気で相手にするような人じゃない。
この人は…。