強引上司とオタク女子
「ありがと。えっとじゃあ、……このファイルに綴じて、一覧表を作ってくれる? フォーマットはこのフォルダの……えっと」
「これですか? 業務用フォーマットって書いてある」
「そうそう。そこの、事業収支一覧って用紙」
画面を見ながら軽く説明すると、梨本さんはすぐに作業を始める。
動きがいいな。入力も早いし、コンピューターにも慣れてそう。
あんまりしゃべらない子だなって思っていたけど、デキる子なんだな。
慣れて話せるようになってくれば営業にも行けそう。私より出世するよ、きっと。
小一時間して、梨本さんが出来上がったものを見せてくる。
うん、完璧。
普通、一つくらいミスするものだけど、すごいなぁ。
さすが国島さんの元カノ。高スペック女子じゃん。
……てか、この彼女を基準にするならば、なんで国島さんは私なんかに惚れるわけ?
ギャップか?
前の女との違いを楽しんでいるだけ?
でももしそうなら、飽きるのもきっと早いだろうな。
ギャップの効果なんてせいぜい半年くらいだよ。
「うん。自惚れるのやめよう」
「はい?」
「あれ? 口に出てた? なんでもない、なんでもない」
思えば、顔もそこそこ営業成績良好の高スペック男子である国島さんが、私を好きになるのってかなりおかしい話だ。
川野八重は見た目も平凡、仕事もそこそこ。平坦な人生が似合う地味女。
ただ、隠していたオタク属性がバレたことで、面白がられてるだけなんだ。
納得しつつ、なんだか胸がしぼんでしまったみたい。
今度は黙ってしまった私を、梨本さんが心配そうに見る。