強引上司とオタク女子


「いきなり今日は無理です!」

『なんでだよ』

「なんでも事前に許可をとってください。いきなりは苦手です」

『いちいち許可なんてとるのめんどくせぇよ』

「そんなことだから、私の夢のファーストキスがっ……」

奪われたんじゃん。

私の予定では、見た目はイマイチでも気の優しい私だけを好きでいてくれる人と半年付き合った後で、湖のほとりとかで水音なんかを聞きながらするものだったのに。

で、後の人生で湖畔で水音を聞く度にファーストキスを思い出すっていう、人生の美しい一ページになる予定が。

すべてが予想外。
国島さんのせいだよ。

ブツブツ言っていたら、舌打ちが聞こえてきた。


『……ちっ、じゃあ、明日。それならいいんだろ。仕事終わったらおまえの部屋に行くから』


色々譲歩はしてもらえた。
でも国島さんのことだもん、ご飯だけで終わるか怪しいじゃん。
ここは釘をさしておかないと。


「泊めませんよ!」

『分かってるよ。飯食わせて欲しいだけ』

「なら、いいです」


たかが電話で興奮した。

落ち着いてきたら今度は使命感がふつふつと湧いてきた。
明日までに部屋を片付ける。それも相当大変なミッションだよね。急いで帰らなきゃ。


「じゃ、そういうことで!」


電車が来なきゃどうにもならないのに、気ばかり焦ってどうしようもない。
まだ話したそうな国島さんとの電話を切って、私は走りだした。



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