強引上司とオタク女子


 日はまた昇る。男はまた来る。

部屋を出た途端にアパートの前にいる国島さんを発見して、嬉しいんだか嫌なんだか分からない気持ちを持て余す。


「だから。なんでいるんですか」

「いつもの時間より十五分早いじゃん。えらいな」

「たまたまですよ」


一体いつから待ってたんだ。


「……あの、迎えには来なくても結構です」

「なんでだよ」

「駅で待ち合わせしましょうよ。同じ道戻らせるのとか気が引けます」

「……ふうん」


私をまじまじと見た彼は、すくい取るように手を握る。


「じゃあそうするよ。でも先に行くなよ。必ず待ってろよ」

「いなかったら先行きますよ」

「その時はメールでもよこせ」

「はいはい。案外束縛きついんですね」

「まあな。なんせライバルが二次元だからな」

「は? ライバル?」

「そうだろ。相手はお前と常日頃から一緒だ」


は? なにその理屈。

二次元に対して対等にヤキモチ焼くの?
体中の血液が上がってきそう。


「いや、でも待って、国島さん。私は確かにオタクだけど、御影石くんは癒やしだけど、彼には大場ちゃんというカップリング相手がいる……」

「詳しいことは分からねぇけどよ。俺よりそっちが好きなことが気に入らないわけ」


そっぽを向いて、さっきより早足で国島さんが歩き出す。

手は繋がったままだから、引っ張られて私まで小走りになる。

国島さんの手、熱いや。
ドキドキが伝わってくるみたい。

初めて、スマホの中の御影石くんの画像に、後ろめたいような気持ちを抱いた。
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