強引上司とオタク女子
それでも、格闘すること小一時間。
幅の不揃いなキャベツの千切りを添えて、なんとか格好のついたお皿が出来上がった。
「はー、間に合ったー」
ホッと一息ついて、時計の短針が8に近づいているのを見て驚いた。
もうこんな時間。
定時で上がって頑張ってたのに、あっという間だ。
でも、国島さん、……なんか遅くない?
昨日だって、十九時くらいには終わってたみたいだったのに。
携帯を見てもメールひとつ入っていない。
急に不安になってくる。
さっきまでは興奮に満ちていた部屋が、とても静かに感じられる。
今日って約束したよね。
電話して確認しようか。
でも、もし私の勘違いだったりしたらウザくない?
部屋中を歩きまわりながら思案する。
こんな時、普通の女の子ならどうするんだろ。
電話する?
しない?
「し、しない……いや、する?」
遅いのは仕事に決まってる。
急かすような事するのは気が引けるし、……でももし事故にでもあってたら?
私に連絡できない何かがあったら?
気がついたら、強く握りこぶしを作っていたらしい。
手を開いたら、手のひらに爪の痕がついていた。
いかん、落ち着こう。
御影石くんに癒やしをもらおう。
本棚代わりのカラーボックスに昨日つけたのれんカバーをめくって、『ドリーム探偵・ミカゲ:ノベライズ』を取りパラパラとめくる。
でも、文字が上滑りする。
『ミカゲの推理に間違いはない』
御影石くんお決まりの謎解き前のセリフ。
ねぇ、だったら推理して。
どうして国島さんは来ないの?
自分から、夕飯食べたいって言ったくせに。
こんなに私を振り回したくせに。
仕事にしたって、連絡の一つくらいちょうだいよ。